個人再生とは?デメリットや費用、手続きの流れ、自己破産や任意整理との違いも徹底解説!
弁護士 梅澤 康二
プラム綜合法律事務所代表。
2006年司法試験合格後、東京大学法学部卒業。第二東京弁護士会所属(登録番号37942)。アンダーソン・毛利・友常法律事務所での6年間の執務を経て2014年8月にプラム綜合法律事務所を開設。大手事務所と同等のクオリティを意識しながら企業法務から一般民事まで総合的なリーガルサービスを提供。
個人再生とは、債務整理の手段の一種で、裁判所を介して借金問題を解決する方法です。
個人再生は、債務者が再生計画案を作成して債権者に提出し、承認された場合、大幅に借金額を減らした上で残りの借金を支払いを続けながら債務整理する手続きです。
この記事では、個人再生とはどういったものか、メリットやデメリットなど弁護士の監修の下詳しく解説しています。
目次
個人再生とは?
個人再生とは、裁判手続によって、強制的に借金を大幅に減額し、残った借金については長期(原則3年間)の分割弁済とすることによって個人の経済的更生を図る債務整理の一つです。
任意整理をしても借金を支払えない程の大きな借金がある人や、自分が所有する家等手放したくない財産がある人に適しています。
債務整理の手段としては、個人再生のほかにも自己破産、任意整理があります。しかし、自己破産では、債務者の財産は必要最低限の部分を除いて、破産手続内で換価処分されます(換金されたものが債権者に対する借金の返済に充てられます)。
他方で、個人再生では、必ずしも財産の処分は必要とされていません。また、任意整理の場合は、借金の元金それ自体の減額を期待することができませんが、個人再生では、借金の元金が原則として5分の1程度(最大10分の1程度)減額できます。
このように、個人再生は、自己破産、任意整理のデメリットを補いつつも個人の経済的更正を図る手続ということができます。
弁護士解説の個人再生の動画がわかりやすいので、参考にされてください。
- 裁判所を通した手続きで、借金額を原則として5分の1程度にまで大幅に減額できる
- 住宅ローンを除いた借金を減額できる特別措置が可能!家を守れる
- 「小規模個人再生」と「給与所得者再生」の2種類の方法がある
個人再生の種類と個人再生利用の条件
個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」があります。
どちらも個人再生の種類で、大幅に借金額を減額できるメリットがありますが、小規模個人再生の方が個人再生後の返済額が減ることから、ほとんどの方は給与所得者再生より小規模個人再生を利用しています。
また、最低限返済すべき金額(最低弁済額)は、以下のように定められています。
負債額 | 最低弁済額 |
100万円未満 | 負債額全額 |
100万円以上500万円未満 | 100万円 |
500万円以上1500万円未満 | 負債額の5分の1 |
1500万円以上3000万円未満 | 300万円 |
3000万円以上5000万円未満 | 負債額の10分の1 |
小規模個人再生とは?小規模個人再生が利用できる条件
小規模個人再生は、もともと小規模事業者を対象としていたのですが、現在は、サラーリーマンなどの給与所得者も利用しています。
個人再生を利用する方の大半がこの小規模個人再生を利用しているのが実情です。
名前だけ見ると、給与所得者は、小規模個人再生ではなく、給与所得者再生を選択しなければならないように見えますが、アルバイト、自営業、サラリーマンの方でも要件さえ満たせば問題なく利用できます。
その理由の一つとして、個人再生後に返済しなければならない金額(最低弁済額)が小規模個人再生より給与所得者等再生の方が大きくなる傾向がある、ということが考えられます。
もっとも、小規模個人再生では、再生債権者(再生債務者(個人再生する債務者)に対して債権を有する債権者)が、再生債務者が提案した再生計画案に対して不同意とした場合(不同意とした再生債権者の議決権者の数が総数の半数以上、かつ、その議決権の額が議決権者の議決権の総額の1/2以上の場合)は、手続が進められずに終了することがあります。
他方、給与所得者等再生ではそうした条件は必要とされていません。
そこで、個人再生する場合、まずは小規模個人再生が可能かどうか(再生債権者が再生計画案に異議を述べない債権者かどうかなどを)検討してみて、それが不可能と見込まれる場合に給与所得者等再生を選択するというのが基本的なスタンスとなります。
給与所得者等再生とは?
給与所得者等再生とは、文字通り、サラリーマンなどの給与所得者が利用できる個人再生ですが、上記のとおり、あまり利用されていません。
というのも、給与所得者再生には、借金の減額後の弁済額が可処分所得の2年分以下にできないという条件があるため、ある程度の給料がある方だと、弁済額がどうしても2年分の可処分所得(収入-住民税等の税金-社会保険料-必要最低金額の生活費)より小さくならないため、メリットが削がれてしまいます。
つまり、給与所得者再生は、小規模個人再生の条件を満たさなかった場合に利用されるケースが多いです。
ちなみにこちらは、給与所得があることが条件なので、個人事業主の方は選択できません。
個人再生の条件|「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の利用条件と注意点
利用できる条件 | ・継続した収入・借金総額が5,000万円を超えない(利息制限法の引き直し計算後)・債権者の半数以上が反対しないかつ・反対した債権者の借金額が全体の半分を超えない | ・変動が少ない安定した収入・借金総額が5,000万円を超えない(利息制限法の引き直し計算後) |
注意点 | ・借金の減額幅が大きい・債権者の同意が必要 | ・債権者の同意が不要・サラリーマンのような安定した収入 |
また、どちらの場合も、返済をしなければならない弁済額は、不動産や自動車等裁判所が「財産」と判断するものの価値(清算価値)を超える額でなければい(清算価値保証の原則)とされています。
個人再生に向いている人
個人再生は、繰り返しになりますが、借金総額が大幅に圧縮されるという大きな利点があります。借金額が5,000万円を超えず、継続した収入がある人は、個人再生は非常に有益な借金減額の方法となります。
また、自宅があり、自宅を守りたいというニーズがある人も、個人再生に向いていると言えます。
- 借金額が5,000万円を超えず、継続した収入がある人
- 自宅を守りたいというニーズがある人
継続した収入があるとは?
継続した収入というと、正社員のサラリーマンや派遣社員などを思い浮かべるかもしれませんが、個人事業主でも、アルバイト、年金受給者の場合はどうなるかまとめました。
継続した収入とみなされるか? | |
個人事業主 | 毎月定期的な収入がなくても、3ヶ月に1度の割合で収入が入り、月1回の弁済が可能であればOK |
アルバイト | 相当期間継続して雇用されている実績があり、今後も継続されるのであればOK |
年金受給者 | 終身年金であればOK |
ただ、継続的な収入と認められるかどうかは個人再生での解決実績が多い経験豊富な弁護士など専門家に相談し確認することが大切です。
個人再生のデメリット
個人再生するデメリットは以下のとおりです。
様々な条件をクリアする必要がある
個人再生するには様々な条件をクリアしていく必要があります。具体的には、大きく個人再生手続開始の条件、個人再生手続継続の条件、個人再生計画認可の条件に分けることができます。
そして、それぞれの段階で小規模個人再生特有の条件、給与所得者等再生特有の条件も設けられていますので、手続に応じて条件をクリアしていく必要があります。
さらに、住宅ローン特則にも特有の条件も設けられていますので、利用する場合にはクリアしていく必要があります。
なお、小規模個人再生にも給与所得者等再生にも共通する個人再生手続開始の共通の条件として、
・継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること
があります。
そして、これらの条件を満たすことができなければ個人再生手続を始めることはできないということになります。任意整理と異なり、誰でも手続を使えるわけでなく、自己破産と異なり条件が厳格となっています。
個人再生の2つの種類と特徴と条件で条件については、詳しく解説していますが、再度表を掲載します。
利用できる条件 | ・継続した収入・借金総額が5,000万円を超えない・債権者の半数以上が反対しないかつ・反対した債権者の借金額が全体の半分を超えない | ・変動が少ない安定した収入・借金総額が5,000万円を超えない |
注意点 | ・借金の減額幅が大きい・債権者の同意が必要 | ・債権者の同意が不要・サラリーマンのような安定した収入 |
個人再生の成功率は?申立で不許可になる確率、失敗率は?
前出の日本弁護士連合会の2020年の調査によると、有効データ747件のうち、認可決定が91.7%となっており、不許可になる割合は、0.4%になっています。過去5回の調査結果を下に記載します。
申立結果 | 20年調査 | 17年調査 | 14年調査 | 11年調査 | 8年調査 | 平均 |
認可決定 | 91.70% | 91.35% | 88.56% | 92.15% | 90.18% | 90.58% |
不認可決定 | 0.40% | 0.52% | 0.14% | 0.22% | 0.38% | 0.33% |
平均でも個人再生の成功率(認可決定)が90%を超えていますので、申立ての成功率はかなり高いと言って良いと思います。不認可決定になる確率は、平均1%未満ですので失敗する確率は非常に低いと言えます。
手続に手間と時間がかかる
裁判所に対して個人再生を申立てるには様々な書類を取り寄せ、記載して準備し、申立書とともに提出する必要があります。まず、この準備だけでも一苦労です。
この準備をご自身の力だけでしようとすると、おそらくこの段階で個人再生を断念してしまう方も多いのではないでしょうか。また、仮に申立てできたとしても、今度は再生債務者自身で再生計画案を作成していかなければなりません。これを作成するにも多くの手間と時間がかかります。
また、ご自身の都合のよい計画案にしたのでは再生債権者に否決されて手続を断念せざるを得なくなります。他方で、個人再生の手続を弁護士等の専門家に依頼した場合は上記の負担を軽くすることができるでしょう。
実際のところ、代理人なしで個人再生の申し立てをした割合は、2020年の調査では0%となっています。過去5年間のデータをご確認していただくとよくわかると思います。
個人再生申立の代理人の有無 | 20年調査 | 17年調査 | 14年調査 | 11年調査 | 8年調査 | 平均 |
申立代理人あり | 84.87% | 82.18% | 78.67% | 77.75% | 78.42% | 80.37% |
申立代理人なし | 0.00% | 0.13% | 0.28% | 0.11% | 0.58% | 0.22% |
司法書士に依頼 | 12.05% | 16.12% | 20.06% | 21.92% | 20.04% | 18.03% |
不明・記入漏れ | 3.08% | 1.57% | 0.99% | 0.22% | 0.96% | 1.36% |
過去5年で見ても、個人再生申立て時は、弁護士に依頼する割合が80%、司法書士に依頼する割合が18%となっています。
官報に公告される
個人再生を申立てると手続の各段階で個人再生を進めていることが官報に公告されます。つまり、100%誰にも知られずに手続を進めることはできないということです。
もっとも、常日頃から官報を見ている人は一部の人に限られますから、官報に公告されたために個人再生をしたことが周囲にバレるということは稀でしょう。
保証人、連帯保証人に迷惑をかける
たとえば、今抱えている債務の中に親族や知人などの保証人、連帯保証人がついている債務があるとします。個人再生する場合は、その債務も含めて手続を進めていかなければなりません。
そして、個人再生するということはその債務について返済できなくなったということを意味していますから、返済の請求は債務者ではなく、保証人や連帯保証人に行きます。
保証人、連帯保証人がついている債務だけを個人再生の対象から外すことはできません。個人再生する場合は事前に保証人、連帯保証人ともよく相談することが必要です。
信用情報に登録される・クレジットカードが作れない
個人再生を申立てると信用情報機関の信用情報に事故情報として登録されます。信用情報への登録、個人再生の場合、借金の完済時から5年から10年は残ります。
したがって、借金の完済時から5年程度はローンを組む、新たな借入をする、クレジットカードを作るなどということが難しくなります。
また、クレジットカードが作れない、ETCカードが作れないだけでなく、携帯電話端末を分割払い(割賦契約)で購入している場合は、個人再生をすると携帯も使えなくなる可能性があるので、注意が必要です。
信用情報機関は、加盟する会員会社から登録される信用情報を、管理・提供することで、消費者と会員会社の健全な信用取引を支えています。
消費者がクレジットやローンなどを利用する際、会員会社は消費者の信用力を判断する材料の一つとして信用情報機関に登録されている消費者の信用情報を確認しています。
この確認を行うことで、会員会社は消費者の返済能力に応じた適切な信用供与が可能となり、過剰貸付などを未然に防ぐことができます。
また、消費者は、自身が築き上げてきた「信用力」に基づいた信用供与を必要な時に迅速に受けることができます。
信用情報機関は、消費者信用市場の健全な発展を支える社会インフラとしての役割を担っています。
【参考情報】 指定信用情報機関 株式会社日本信用機関JICC
弁護士が解説したブラックリストについてわかりやすいので参考にしてください。
【まとめ】個人再生のデメリット
- 様々な条件をクリアする必要がある
- 手続に手間と時間がかかる
- 官報に公告される
- 保証人、連帯保証人に迷惑をかける
- 信用情報に掲載される・クレジットカードが作れない
個人再生する7つのメリット
以下で、個人再生の7つのメリットについて詳しく解説していきます。
借金の大幅減、長期分割が可能
個人再生では、民事再生法という法律で、「最低でもこれだけは返済してください」という額(最低弁済額)が規定されています。最低弁済額は以下のとおりです。
借金総額 | 最低弁済額 |
100万円未満 | 借金総額(つまり減額なし) |
100万円以上500万円以下 | 100万円 |
500万円超1500万円以下 | 借金総額の5分の1 |
1500万円超3000万円以下 | 300万円 |
3000万円超5000万円未満 | 借金総額の10分の1 |
上の表からすると、たとえば借金総額が1000万円だった場合、5分の1の200万円にまで減額させることが可能ということになります(なお、最低弁済額以下の再生計画では裁判所の認可決定を受けることができません)。
また、残った200万円についても3年(又は5年)という長期間での分割返済が可能となります。
これにより、月々の返済額を大幅に抑えることができ負担を軽くすることができます(もっとも、再生債務者が有している財産の内容によっては最低弁済額に設定できない場合もあります)。
他方で、任意整理ですとここまで減額することは難しく、月々の返済額も個人再生した場合より高額となるでしょう。
住宅ローン特則を使うことができる(住宅を処分せずに済む)
個人再生では、民事再生法という法律の中に「住宅資金貸付債権に関する特則」という規定が置かれています。これが住宅ローン特則と呼ばれているものです。
「住宅資金貸付債権」とは、住宅の建設・購入・改良のために必要な資金に必要な貸付債権のことで、代表的なものとしては住宅ローンがあります。そして、住宅ローン特則では、個人再生計画において、住宅ローン等に関する条項(住宅資金特別条項)を設けることができるとしています。
住宅資金特別事項とは、住宅ローン等については返済を継続しつつ住宅を処分されないようにし、他方で、住宅ローン等以外の借金(債権)について減額、長期分割とするというものです。
自己破産すると、通常は住宅についている抵当権を実行されて住宅を処分しなければならないでしょう(また、抵当に入っていなくても、持ち家は破産債権者のために換価処分されることになりますので、手元には残りません。)。
また、任意整理では、住宅ローン会社と交渉していくことも考えられますが、すでに長期の分割返済を約定している以上、さらに長期分割を求めていくことは現実には難しいでしょう。
住宅ローン特則を使うとこうした自己破産、任意整理のデメリットを埋めつつ、生活再建を図ることが可能となります。
債権者の意向に左右されにくい
個人再生を行っても、手続後は借金を返済していかなければならない点は任意整理と変わりありません。しかし、任意整理はあくまで債権者との交渉によって、返済額・期間・回数など決めていくものです。
したがって、債権者が提示した条件に合意しない限り、債務者の責任が軽減されることはありません。つまり、債務整理が奏功するかどうかは債権者の意向しだいということになります。
他方で、個人再生は裁判手続を利用します。裁判所に再生計画案を提出し、それが多くの債権者の同意により認可されれば、これに反対する債権者もそれに従わざるをえません。
つまり、個人再生には強制力があるということです。
その意味で、個人再生は債権者の意向に左右されにくいといえます(なお、小規模個人再生でも、再生債権者の多くが再生計画案に不同意とした場合は、再生計画案が否決されますので、債権者を完全に無視できるわけではないことに留意しましょう。)。
債権者からの督促、取立が止まる
弁護士が債務者から個人再生の依頼を受けると、弁護士は各債権者に対して受任通知を送ります。
受任通知とは、「弁護士が●●(債務者)の代理人となりました。」「以後、債務者に対する督促・取立はおやめください。「債務者への通知、連絡は代理人弁護士にしてください。」などという内容の通知です。
これにより一定の債権者は債務者に対して督促、取立を行うことが法律上禁止されます。また、その他の債権者も通常、督促、取立を行うことをやめます。
こうして個人再生すると債権者からの督促、取立が止まり、ひとまず債権者からの督促、取立に追われる日々から解放されます。
財産に対する強制執行(差押え)が停止される
個人再生を申立てる方の中には、預金(債権)や給料(債権)などを強制執行により差押えられている、という方もいるでしょう。
しかし、裁判所の再生手続開始決定を受けた場合には、債権者はその差押えを中止しなければなりません。また、新たに再生債務者の財産に対して強制執行することもできなくなります。
自己破産のような制限がない
自己破産すると、法律上、一定の財産を処分しなければならない、復権するまでは資格を必要とする職(弁護士など)の仕事ができない・仕事に就けない、手続中は移動が制限される、破産管財人に郵便物をチェックされるなどの制限があります。
他方で、個人再生ではこうした制限はありません。特に、個人再生で財産を処分せずに済むという点は大きなメリットでしょう(ただし、事実上、財産の処分を検討しなければならない場合はあります)。
個人再生と財産の処分について
個人再生すると財産を処分しなければならないのか、と気になる方もおられると思います。
この点、メリット6(「自己破産のような制限がない」)でも触れましたが、個人再生の場合、自己破産と異なり法律上は生命保険や車などの財産を処分する必要はありません。
しかし、手続上、一定の財産(清算価値)が高額であれば、個人再生の条件を満たすための妨げ、あるいは将来の返済額に影響してくる場合には、その財産を処分しなければならないという場合も出てくるでしょう。
また、ローンが残っている財産(車がその典型)については、ローン会社に所有権が留保されていることが通常ですから、個人再生するとその所有権に基づいて車を処分されてしまう(引き揚げられてしまう)可能性は十分にあります。
もちろん、個人再生をしても、自動車ローンの支払いが終わっているのであれば、車は処分する必要はなく、手元に残すことができます。
個人再生の費用は?
個人再生申立てには、弁護士や司法書士に支払う費用と裁判所に納める費用の2種類があります。
弁護士や司法書士への費用は、着手金・報酬金併せて50万~60万円程度はかかると考えた方が良いでしょう。なお、弁護士を立てず、本人が申し立てる場合は、裁判所への与納金が弁護士依頼時に比べ10倍以上かかります。
住宅ローン特則を利用する場合は、60万円程度、利用しない場合は、50万円程度。
また、裁判所へ納める費用は、2万円程度です。
裁判所への費用の内訳は、収入印紙(1万円)、切手は債権者数によりますが、2,000円前後、与納金(弁護士申立て12,268円)です。
参照:裁判所
詳しくは、こちらの記事で。
個人再生の流れ・手続き方法は?
上記イラストの個人再生の手続き・スケジュールをさらに細分化し、より詳細に個人再生の流れを解説します。
- 専門家への相談・依頼
- 受任通知書の発送
- 債権調査・過払い金返還請求
- 手続きに必要な書類の準備
- 申立書の作成
- 管轄裁判所に再生手続きを申立てる
- 再生審尋(審問)・個人再生委員との面談
- 履行テストの開始
- 再生手続き開始決定
- 債務者財産の調査
- 再生債権の届出
- 一般異議申述期間・再生債権評価申立て
- 再生計画案作成・提出
- 付書面決議決定・付意見聴取決定
- 再生計画認可決定
- 再生計画案に基づき返済開始
専門家への相談・依頼
個人再生を申し立てるのであれば、債務者個人で進めるのではなく、弁護士や司法書士などの専門家に依頼することをおすすめします。
専門家に依頼する場合、その分依頼費用がかかるため、自分で手続きを進めたいと考える方も多いと思います。
しかし、個人再生の手続きは複雑で、必要書類も多岐に渡ります。書類収集の段階で時間がかかってしまうと、債権者から訴訟を起こされ、財産を差し押さえられる可能性も高まるでしょう。
仮に申立てまで進んだとしても、適宜裁判所が定めた期間内に適切な対応をしていく必要があります。その期間を過ぎてしまうと、手続きが途中で中断してしまい、これまでしてきたことが全て無駄になってしまうおそれもあります。
また、個人再生をおこなう場合には、全ての債権者に対して平等でなくてはいけません。意図せず財産の申告漏れがあった場合には、財産隠しとして再生手続きが中断する可能性もゼロではないのです。
無謀な再生計画を立てて返済が困難になった場合、再生計画が取り消されてしまい、もともとの借金を全額返済する義務が復活してしまうおそれもあります。
個人再生の手続きは、できる限り専門家のサポートのもとでおこなうようにしましょう。
受任通知書の発送
弁護士などの専門家に正式に依頼をすると、専門家が全ての債権者に対して「受任通知書」と呼ばれる書面を送付します。
受任通知書とは、専門家が介入し個人再生の手続きを進めることを知らせる書面になります。
この通知書が債権者に届くと、債務者に対する督促は全てストップします。認可決定が降りるまでは、返済をする必要もなくなるので、この間に、履行テストや認可決定が降りたあとの返済資金を貯めておくのが良いでしょう。
ただし、債権者は、債務者に直接の督促が出来ないだけで、訴訟を起こすことは禁止されていません。すでに、返済を数か月滞納している場合には、受任通知書を送ったとしても訴訟を起こされてしまう可能性もゼロではないことを頭に入れておきましょう。
なお、専門家に依頼した場合、依頼のタイミングで着手金を支払うのが原則ですが、事務所によっては分割での支払いが可能な場合もあります。その場合、ストップしている債権者への返済分を専門家への依頼費用に充てることになるでしょう。
債権調査・過払い金返還請求
受任通知は、取引履歴の開示依頼も兼ねており、受任通知書の送付から数週間〜1か月程度すると、これまでの取引履歴が各債権者から送られてきます。
個人再生では、今後の返済計画を立てるために、現在の具体的な債権額を正確に把握する必要があります。専門家は、これらの取引履歴を精査して、債権の具体的な金額を確定します。
債権調査の結果、過払い金が発生している場合であれば、利息制限法に基づく正しい利息での引き直し計算をおこなったうえで、過払い金の返還請求をおこなうことになります。
なお、過払金返還請求において、交渉で折り合いがつかない場合には訴訟を提起することになりますが、個人再生にかかる費用とは別に専門家への依頼費用がかかる場合があります。あらかじめ、対応範囲とかかる費用を確認しておきましょう。
手続きに必要な書類の準備
専門家の債権調査と並行して、申立てに必要な書類の収集をおこないます。
必要書類は多岐に渡りますが、専門家に依頼するのであれば、書類の取得方法や取得順序、取得が難しい場合の対処法などについてアドバイスをもらえます。
個人再生申立ての必要書類
個人再生の手続きにおける必要な提出書類については、地方裁判所によって異なりますが、以下では、東京地裁モデルを参考に必要書類を作成しました。
- 申立書
- 収入一覧及び主要財産一覧
- 債権者一覧表
- 住民票の写し
- 委任状
- 財産目録
- 清算価値チェックシート
- 収入の額を明らかにする書面(確定申告書類や源泉徴収票、課税証明書、給与明細書など)
- 可処分所得チェックシート(給与所得者等再生のみ)
- 家計全体の状況
- 住宅資金特別条項を定める場合は、登記事項証明書
その他、必要な添付書類については後述します。
申立書の作成
裁判所に提出する各種書類が揃ったら、通帳や保険証券、車検証や不動産登記簿謄本等の財産に関する資料を参考に、専門家が申立書を作成します。
申立書の書式は、小規模個人再生と給与所得者等再生のどちらを選択するかで異なります。
参照:個人再生手続参考書式 書式1.2 日本弁護士連合会HP
申立書には、なぜ借金を作ってしまったのか、どうして返済が困難になってしまったのかについて、くわしい事情を記載する欄が設けられています。
このいわゆる「作文」については、基本的に債務者自身の言葉で内容を考える必要がありますが、最終的な体裁は専門家が整えてくれるので、これによって個人再生が失敗することは基本的にほとんどありません。
また、認可決定後に返済を継続しておこなう必要のある個人再生では、家計表(家計簿)を裁判所に提出する必要があります。
手続き後に返済が可能かどうか、財産隠しや偏頗弁済がないかどうかなどをチェックする重要な書類になるので、できる限り正確に記載するよう心がけてください。
なお、裁判所によって異なりますが、基本的に直近2か月分の家計表の提出を求められるケースが多いです。その場合でも、基本的に認可決定が下りるまでは家計表を提出し続けなければならないので、おおむね6〜8か月程度は家計表をつけ続ける必要があるでしょう。
管轄裁判所に再生手続きを申立てる
申立書の作成および添付書類の準備が完了したら、原則として「再生債務者の住所地を管轄する地方裁判所」に書類を提出することで、個人再生の申立てをおこないます。
申立ての際は、申立て手数料に相当する額の収入印紙を申立書に貼り付け、各裁判所の指定する郵便切手の組み合わせを申立書と一緒に送付します。
裁判所が提出書類をチェックすると手続きが進みますが、書類が不足していたり、申立書の記載に不備が合った場合には、書面の補正や書類の追加提出(追完)が求められるケースもあります。
再生審尋(審問)・個人再生委員との面談
提出書類のチェックが終わると、裁判所によっては裁判官による審尋(面接)がおこなわれる場合があります。この審尋では、裁判官が再生債務者から、直接申立てに至る経緯などについて話を聞くことになります。
弁護士に依頼したのであれば、審尋に同席してもらえるため、裁判所との期日前に打ち合わせの時間をとるケースが多いです。
また、提出書類や審尋の結果、裁判所が必要と判断した場合には、「個人再生委員」と呼ばれる再生債務者の財産の調査・管理や再生手続きを円滑に進めるためのサポートをする人が専任される場合があります。
個人再生委員が選任された場合、別途個人再生委員への報酬が必要になるほか、個人再生委員との面談が必要になります。個人再生委員は、裁判所近くに所在している法律事務所の弁護士であるケースが多いです。
面談は、その個人再生委員である弁護士の法律事務所でおこなわれるケースが多く、個人再生に至った経緯や借金・財産状況などに関して質問を受けたあと、収支状況を改善させるためのアドバイスや今後の手続きの流れなどに関してアドバイスを受けます。
面談の受け答えで手続きが中止になってしまうようなことはほとんどないので、それほど不安に思う必要はありません。ただし、財産隠しをしたり、質問に対して嘘をつくなどの不誠実な対応をとると、再生手続きの開始決定が出ないおそれもあるので、くれぐれも誠実に対応するよう心がけてください。
履行テストの開始
個人再生の申し立てをすると、裁判所によっては履行テスト(積立トレーニング)が実施される場合があります。
履行テストとは、再生計画案に基づいた返済を継続できるかどうかを判断するテストです。個人再生委員の指定する銀行口座に、今後返済するであろう金額を振り込んでいくことで、返済の継続可能性をチェックします。
申し立てから1週間程度経過してから振込みを開始し、基本的に6か月(6回)に渡っておこなわれる場合が多いです。6回分の金額を一括で振り込めば良い訳ではなく、あくまでも毎月決まった金額を継続して支払うことが重要となります。
振込みが1回でも滞ると、継続した返済が困難であるとして認可決定が降りない可能性があるので、くれぐれも返済期日に遅れないよう返済してください。
なお、この振込みはあくまでも今後返済を続けられるかどうかのチェックなので、履行テストで支払った金額については、個人再生委員の報酬分を差し引かれたあと返還されます。
再生手続き開始決定
履行テストで無事1回目の振込みが完了する、もしくは申し立てから1か月程度経過すると、裁判所から個人再生手続きの開始決定が下されます。
裁判所は、個人再生委員から提出された意見書や履行テストの結果、提出された書類を総合的に考慮して、個人再生の手続きを進めても問題ないかどうかを判断します。
なお、開始決定が出されると、その旨が官報に掲載されます。
債務者財産の調査
個人再生手続きの開始決定が下されると、提出された財産目録を基に、裁判所や個人再生委員による財産の調査がおこなわれます。
財産目録とは、再生債務者の財産状況をあきらかにした書面のことです。具体的には、預貯金の額や車・不動産などの財産の種類・評価額、退職金の見込み額や保険の解約返戻金の有無などについて記載します。
財産調査は、不正な財産隠しがおこなわれていないかどうかをチェックするためにおこなわれます。保有する銀行口座の通帳コピーも全て提出することになるので、不審なお金の流れがあった場合、その説明を求められる場合があるでしょう。
また、再生債務者は「財産状況等報告書」と呼ばれる書面を裁判所に提出する必要があります。
財産状況等報告書とは、財産状況の変動の有無を報告する内容の書面ですが、申し立て時に提出した財産目録の内容からとくに財産が変動していない場合には、「財産目録に記載した通り」とチェックを入れた報告書を裁判所に提出します。
提出時期は裁判所により異なりますが、申し立てから1〜3か月以内には提出を求められるケースが多いです。
再生債権の届出
個人再生の開始決定が出されると、裁判所は、各債権者に債権の届出をおこなうように通知を発します。
債権の届出とは、各債権者が再生債務者に対して有している債権を届け出ることで、債権額に加えて、開始決定前日までの利息や遅延損害金などを含んだ債権全額を裁判所に報告します。これによって、再生手続きにおける債権額を確定させることになります。
裁判所によっても異なりますが、通常は1〜1か月半程度の提出期限が設けられるため、裁判所の指示に従い債権届を提出することになります。また、提出された債権届は、再生債務者の下にも送付されます。
各債権者からの債権届が揃ったら、債権者から申告された債権額を認めるかどうかを判断する「債権認否一覧表」を裁判所に提出することになります。申立てから、おおよそ2〜2か月半程度で債権認否一覧表までの提出が完了するケースが多いでしょう。
一般異議申述期間・再生債権評価申立て
債権届について異議がなければ、債権認否一覧表を裁判所に提出することで再生債権が確定します。しかし、債権額について納得できない点がある場合には、再生債務者および各債権者は、裁判所に対して書面で異議を述べることができます。
異議が述べられた場合、お互いの納得のいく債権額を確定させるために、再生債権者は、再生債権の評価を申立ることができます。
再生債権評価申立てがおこなわれた場合、裁判所は、個人再生委員の調査結果や提出された各種資料を総合的に判断し、債権の存否・金額・担保不足見込額などを確定させることになります。
なお、担保不足見込額とは、別除権の行使では弁済を受けることができないと見込まれる額のことを指します。別除権とは、個人再生の手続きによらずとも、各債権者よりも先に弁済を受けられる権利のことで、たとえば、抵当権などが挙げられます。
再生計画案作成・提出
再生債権額が確定したら、その債権額を基にして再生計画案を作成し、個人再生委員と裁判所に提出する必要があります。
再生計画案とは、各債権者に対して今後毎月いくらづつ返済していくのかについて、具体的な計画を定めた書面のことです。
認可決定が降りたあとは、実際にこの計画案通りに返済していくことになるため、無理のない返済計画を立てる必要があります。
ただし、作成された計画案が全てそのまま認められるわけではなく、返済計画が、最低弁済基準や清算価値保障原則などの各種要件を満たす内容になっている必要があります。また、原則3年(長くても5年)以内に完済するような計画でないといけないことも、しっかり頭に入れておく必要があります。
再生計画の提出期限は裁判所ごとに異なりますが、一般異議申述期間から2か月以内の日に指定されるのが原則です。提出が遅れると再生手続きが廃止になる場合もあるので、くれぐれも注意してください。
なお、再生計画案の参考書式は次のとおりです。
付書面決議決定・付意見聴取決定出
裁判所に再生計画案を提出したあとの流れは、「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」とで若干異なります。
小規模個人再生の場合、提出された再生計画案は書面決議に付されます。書面決議とは、提出された再生計画案でいいかどうかの裁決をする決議のことです。
再生計画案に賛同しない債権者は、裁判所が指定した期限までに不同意の回答をおこなうことになります。ここで、次に該当する場合には、個人再生の手続きが廃止となります。
- 債権者の半数以上が再生計画案に不同意である場合
- 不同意の債権者の債権額が、債権総額の2分の1を超えている場合
一方、給与所得者等再生の場合、書面決議ではなく再生債権者の意見聴取がなされます。裁判所は、各債権者の意見を聞いたうえで再生計画を認めるかどうかを決定します。
ただし、書面決議のように債権者による決議ではないので、仮に特定の債権者が反対しても、手続きの一般的な要件を満たしていれば通常は認可されることになるでしょう。
手続きの進行度合いにもよりますが、書面決議や意見聴取は申立てから5か月ごろまでにおこなわれるケースが多く、回答書や意見書の提出期限は2週間程度で設定される場合が多いです。
なお、書面決議または意見聴取のタイミングで、再度官報にその旨が掲載されることになります。
再生計画認可決定
裁判所は、各債権者や個人再生委員の意見を参考にして、再生計画を認めるか否かの判断をおこないます。
無事、認可決定が下された場合には、認可決定書が再生債務者の下に届きます。
なお、裁判所の認可決定のタイミングで3回目の官報掲載がなされます。また、官報掲載から2週間経過したタイミングで認可決定が確定します。
再生計画案に基づき返済開始
認可決定が裁判所から下されたら、個人再生の手続きは完了です。今後は、再生計画案通りの返済をおこなっていくことになります。
返済開始時期は、認可決定が確定した日の翌月からです。ただし、3か月に1回の返済計画を立てた債権者については、認可決定が確定した日から3か月後から返済がスタートします。
支払い先は、各債権者が指定した振込口座です。債権者数が多い場合、それぞれの債権者に振込みをおこなう必要があるので、返済管理が大変になる可能性があります。
返済が滞ると再生計画が取り消しになる可能性もあるので、くれぐれも返済には遅れないよう注意する必要があります。弁護士に依頼しているのであれば、返済代行サービス等を利用することも検討することをおすすめします。
個人再生と任意整理の違いは?
個人再生と任意整理の違い | |
---|---|
個人再生 | 任意整理 |
裁判所を通す法的整理 | 裁判所を通さない私的整理 |
元金を含めた借金総額を大幅に減額 | 借金額自体は減額されない |
手続きが複雑で手間がかかる | 手続き自体は簡便 |
整理する債権者を選択することができない | 特定の債権者を手続きから除外できる |
裁判所を通す法的整理である「個人再生」と、裁判所を通さない私的整理である「任意整理」の1番の違いは、借金の元金そのものが減額されるか否かにあります。
個人再生は、元金を含めた借金総額を大幅に減額したうえで、残りの金額を分割で返済していく手続きです。自己破産のように、全ての借金がゼロになるわけではありませんが、任意整理の場合よりも毎月の返済負担が大幅に軽減されるケースが多いです。
また、個人再生は裁判所を通す手続きであり、かつ元金そのものを減額するという債権者が不利益を被る手続きでもあるので、手続きが複雑で手間がかかるという特徴があります。
さらに、個人再生の場合、整理する債権者を選択することができず、手続きを進めるには全ての債権者を対象にする必要がある点も、頭に入れておくべきでしょう。
一方、任意整理の場合、あくまでも今後支払うはずであった利息や遅延損害金などをカットしてもらう手続きなので、元金そのものを減額させることはできません。交渉次第では、長期の分割が認められるケースもあるものの、基本的には、個人再生ほど毎月の負担額が減ることにはならないでしょう。
また、裁判所を通さない手続きなので、手続き自体も簡便で、基本的には債権者が交渉に応じてくれさえすれば、面倒な書類収集等も不要という特徴があります。
さらに、任意整理なら、特定の債権者を手続きから除外できるので、保証人がついている債権者などを手続きの対象から外すことで、迷惑がかかることを防ぐことができます。
なお、よりくわしい任意整理の解説については、弁護士監修のこちらの記事でご確認ください。
なお、任意整理と個人再生、自己破産のわかりやすい図解はこちらから。
個人再生と自己破産の違いは?
個人再生と自己破産の違い | |
---|---|
個人再生 | 自己破産 |
借金総額が大幅に圧縮される | 借金額が帳消しになる |
ローン付きの住宅に住み続けられる | ローン付きの住宅は処分される |
一定額以上の財産は残せる | 一定額以上の財産も処分される |
職業・資格制限が設けられていない | 職業・資格制限が設けられている |
自己破産ほど厳しい不許可事由が定められていない | 免責不許可事由が設けられている |
個人再生と自己破産は、債務整理の中でも「法的整理」と呼ばれる裁判所を通した手続きです。
提出に必要な書類が多岐に渡ることや、全ての債権者を対象にしなくてはいけないことは共通しています。
一方で、この2つの手続きには次のような違いがあります。
- 自己破産の場合、税金などを除く借金の全額が免責されるが、個人再生の場合、手続き後も完済まで返済が続く
- 自己破産の場合、基本的に手持ちの財産は全て換価処分の対象となるので、持ち家や車などの資産を失うことになるが、個人再生の場合、一定の条件を満たせば持ち家や車などの財産を手元に残しながら借金を大幅に減額できる可能性がある
- 自己破産には職業・資格制限が設けられているが、個人再生には設けられていない
- 自己破産では免責不許可事由が設けられているが、個人再生では自己破産ほど厳しい不許可事由が定められていない
自己破産をすると就けなくなる職業(資格制限)について、制限の対象となる代表的な職業は以下のとおりです。
- 弁護士
- 行政書士
- 公認会計士
- 税理士
- 司法書士
- 社会保険労務士
- 生命保険外交員
- 宅地建物取引士
- 不動産鑑定士
- 警備員など
自己破産の場合、破産手続開始決定から免責許可決定の確定までの間、特定の職業に就くことが禁じられます。
一方、個人再生なら職業・資格の制限は設けられていないため、それを理由に手続きが進められなくなることはありません。
また、自己破産および個人再生における主な免責不許可事由は、以下のとおりです。
- 不当に財産を減少させた
- 不当に債務を負担した
- 特定の債権者にのみ返済するなど債権者平等の原則に反する行為をした(偏頗弁済)
- 収入に見合わない浪費やギャンブル、投資など(射幸行為)により借金をした
- 相手を騙して信用取引をおこなった
- 財産の隠匿をおこなった
- 債権者名簿に特定の債権者のみ記載しなかった
- 裁判所がおこなう調査において、説明を拒んだり虚偽の説明をした
- 破産管財人等の業務を妨害した
- 過去7年以内に1度免責を受けている
- 自己破産手続に協力しなかった
- 再生手続きまたは再生計画案が法律の規定に違反しているにもかかわらず、その不備を補正することができないとき
- 再生計画が遂行される見込みがないとき
- 再生計画が再生債権者の一般の利益に反するとき(清算価値保障原則)
- 債権額の総額(住宅ローンや担保権付ローンを除く)が5,000万円を超えているとき
- 支払い総額が最低弁済額を下回っているとき
- (住宅資金特別条項を利用する場合)再生債務者が住宅の所有権またはその敷地の使用権限を失うことになると見込まれるとき
- (住宅資金特別条項を利用する場合)再生計画に住宅資金特別条項の定めがないとき
- (小規模個人再生の場合)再生計画の決議が不正の方法によって成立するに至ったとき
- 再生債務者が将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがないとき
- (給与所得者等再生の場合)再生債務者が、給与またはこれに類する定期的収入を得ている者に該当しないか、またはその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないとき
- (給与所得者等再生の場合)給与所得者等再生による債務の一部免除、ハードシップ免責または破産免責を受けたときから7年以内に給与所得者等再生の申述をしていたとき
- (給与所得者等再生の場合)返済総額が可処分所得額の2年分以上の額であると認められないとき(可処分所得弁済要件)
以上から、個人再生に向いているのは、次に該当する場合だといえるでしょう。
個人再生に向いているケース
- 債務総額が大きく、任意整理で将来利息や遅延損害金をカットするだけでは返済が続けられない
- 持ち家を手放したくない
- 職業・資格制限や免責不許可事由との関係で、自己破産手続きが進められない
なお、自己破産手続きについてくわしく知りたい方は、弁護士監修のこちらの記事でご確認ください。
個人再生と任意整理、自己破産の違いを表で比較まとめ
個人再生 | 任意整理 | 自己破産 | |
---|---|---|---|
借金の減額幅 | ○ 1/5or1/10に圧縮 |
△ 借金元本は減らず |
◎ 帳消し |
手続き後の返済 | △ 必要 |
△ 必要 |
◎ 不要 |
ブラックリストの掲載期間 | △ 5〜10年 |
◎ 5年 |
△ 5〜10年 |
対象とする債権者 | △ 選べない |
◎ 選べる |
△ 選べない |
住宅ローン付きの家 | ◎ 住み続けられる |
◎ 住み続けられる |
△ 没収 |
一定額の財産 | ◎ 残せる |
◎ 残せる |
△ 没収 |
職業・資格制限 | ◎ なし |
◎ なし |
△ あり |
借金の理由による制限 | ◎ なし |
◎ なし |
△ あり |
同居の家族にバレるか | △ バレやすい |
◎ バレにくい |
△ バレやすい |
手続きにかかる期間 | △ 6か月~1年程度 |
◎ 3~6か月程度 |
△ 6か月~1年程度 |
裁判所の介入 | △ あり |
◎ なし |
△ あり |
差し押さえ | ◎ 止められる |
△ 止められない |
◎ 止められる |
官報への掲載 | △ あり |
◎ なし |
△ あり |
個人再生が利用できないケースはある?個人再生に向いていない人とは?
個人再生を利用できないケースは、下記の条件を満たさない場合です。
2.継続した収入がない。収入があるが、生活を再建するには十分な金額でない場合
3.現在ある財産を処分等すれば、返済ができると判断される場合
上記要件に当てはまる方は、個人再生ができないため、個人再生には向いていないと言えます。
また、個人再生の手続きを行った後に行ってはいけないこともありますので、もし個人再生をやってみようと思った場合は、事前に読んでおくことをおすすめします。
個人再生なら弁護士?司法書士?どちらがいい?
個人再生を依頼するとき、司法書士の場合、再生手続きを代理する権限がないため、申立書の作成や可能な範囲のサポートまでは行なってくれますが、再生審尋(裁判官との面談)や個人再生委員との面談に同席することはできません。
弁護士の場合は、裁判官との面談など全てに同席してくれますので、代理人として直接対応をすることが可能です。全てお任せにしたい場合は、弁護士を選ぶ方がいいでしょう。その分、費用面は、司法書士の方がやや安くなるケースが多いです。
こちらで触れましたが、データ的には、弁護士に依頼する割合が80%、司法書士が18%となっています。
個人再生申立の代理人の有無 | 20年調査 | 17年調査 | 14年調査 | 11年調査 | 8年調査 | 平均 |
弁護士に依頼 | 84.87% | 82.18% | 78.67% | 77.75% | 78.42% | 80.37% |
申立代理人なし | 0.00% | 0.13% | 0.28% | 0.11% | 0.58% | 0.22% |
司法書士に依頼 | 12.05% | 16.12% | 20.06% | 21.92% | 20.04% | 18.03% |
また、裁判所のホームページでも、以下のような記述があります。
決して安易な手続ではありませんから,申立を行う場合には,なるべく法律の専門家である弁護士に依頼することをお勧めします。
少なくとも,個人再生手続,破産,調停,任意整理など各種の負債整理の手続のうち,自分がどれを利用するのが適切なのかについては,是非弁護士に相談するのが妥当でしょう。
個人再生の相談が無料のおすすめの弁護士5選
上記のように個人再生については、裁判所を介し手続き面が非常に煩雑になることから、当サイトでは弁護士に相談することが有益だと考えています。
以下に相談無料の個人再生でおすすめの弁護士を紹介します。
アース法律事務所
債務整理の実績がとても多い、元裁判官が代表を務める信頼できる弁護士事務所です。
当サイトで事務所インタビューを行っていて、雰囲気も人柄も確認済みです。土日祝日も電話相談ができますので、今すぐ話を聞いてもらいたい方は是非ご利用ください。
アース法律事務所へのインタビュー
アース法律事務所へのインタビューの様子をまとめました。代表の河東弁護士や事務局の小林さんにお答えいただきました。しっかりと丁寧に答えていただき気軽に相談できました。
アース法律事務所1分自己紹介音声
アース法律事務所の紹介を1分で話していただきました。
費用面、人柄など少しでも専門家選びの材料になればと考えています。下の▶︎からお聞きください。
ひばり法律事務所
事務所インタビューを実施済みで事務所雰囲気・担当弁護士の人柄も確認済みです。弁護士歴25年で、個人再生の解決実績も豊富です。
ひばり法律事務所に相談する
ひばり法律事務所へのインタビュー
ひばり法律事務所の山本弁護士へのインタビューの様子をまとめました。
ひばり法律事務所1分自己紹介音声
ひばり法律事務所の事務所紹介を1分で話していただきました。
人柄など少しでも事務所選びの材料になればと考えています。下の▶︎からお聞きください。
東京ロータス法律事務所
東京ロータス法律事務所もインタビュー実施済みで、事務所の雰囲気も良好です。
もちろん、個人再生の解決実績も豊富です。
東京ロータス法律事務所へのインタビュー
東京ロータス法律事務所事務局の森様へのインタビューの様子をまとめました。
東京ロータス法律事務所の1分自己紹介音声
東京ロータス法律事務所の紹介を1分で話していただきました。
人柄や分割での弁護士費用の支払い等少しでも専門家選びの材料になればと考えています。下の▶︎からお聞きください。
そうや法律事務所
そうや法律事務所も、インタビューを受けていただきしっかりと丁寧に回答いただきました。
まだ老舗と言われる事務所ではありませんが、これまで大手の法律事務所で債務整理の解決に尽力いただいた方々が作られた事務所ですので、安心して相談できます。
そうや法律事務所へのインタビューと事務所の口コミ・評判
そうや法律事務所の松木代表弁護士へのインタビューの様子をまとめました。
サンク総合法律事務所
サンク総合法律事務所も代表の樋口弁護士にインタビュー済みです。人柄も非常に温厚で相談しやすい雰囲気があります。
債務整理の解決実績もしっかりしているので安心して依頼できます。
サンク総合法律事務所へのインタビュー
産駒双方法律事務所の樋口代表弁護士へ聞き取り調査をさせていただき、さまざま質問にお答えいただきました。
以下では、債務整理全体の相談したいおすすめの弁護士・司法書士をランキングで紹介しています。
個人再生で債務整理をした方の体験談
個人再生を利用された方は、家のローンがあり、そのまま家を残したまま借金の整理をしたい方がほとんどです。
個人再生に関するよくある質問
債務整理には個人再生のほかにも自己破産、任意整理があります。しかし、自己破産では、財産が残っている場合、その財産は破産手続において破産管財人によって管理・処分されます(債権者に対する借金の返済に充てられます)。
他方で、個人再生では必ずしも財産の処分は必要とされていません。また、任意整理では借金の減額を期待することができませんが、個人再生では条件によっては借金を大幅に減額することが可能です。
このように、個人再生は、自己破産、任意整理のデメリットを補いつつも個人の経済的更正を図る手続ということができます。
- 様々な条件をクリアする必要がある
- 手続に手間と時間がかかる
- 官報に公告される
- 保証人、連帯保証人に迷惑をかける
- 信用情報に掲載される・クレジットカードが作れない
詳しくは、こちらから。
- 借金の大幅減、長期分割が可能
- 住宅ローン特則を使うことができる(住宅を処分せずに済む)
- 債権者の意向に左右されにくい
- 債権者からの督促、取立が止まる
- 財産に対する強制執行(差押え)が停止される
- 自己破産のような制限がない
- 一定額の財産は保有できる
詳しくは、こちらから。
掲載されるタイミングは、以下のとおりです。
- 1回目:再生手続の開始決定が出たとき
- 2回目:再生計画案の書面決議または意見聴取のとき
- 3回目:再生計画認可決定が出たとき
1回目のタイミングで官報に掲載される理由は、債務者が個人再生の手続きを進めていることを債権者に知らせ、債権の届出を期間内に提出してもらうためです。
また、2回目のタイミングでは、再生計画案に反対する機会や意見を述べる機会を与える意味を持っています。
官報への掲載(公告)については民事再生法と呼ばれる法律で義務付けられているため(民事再生法35条1項、169条3項4項、188条5項)、避けることはできません。
もし、個人再生における官報への掲載をなくせると謳っている業者がいる場合には、悪質な詐欺業者である可能性が高いので、くれぐれも依頼しないようにしてください。
たしかに、個人再生をしても、裁判所から家族や勤務先に通知が届くわけではありませんし、そもそも官報の存在を知らない人が多いので、そこから個人再生のことがバレる可能性は低いでしょう。
一方で、以下に該当する場合には、家族に個人再生を進めていることがバレてしまう可能性があります。
- 家族が保証人になっている借金がある(債権者から借金の返済を要求される)
- 家族からお金を借りている(裁判所から家族に通知が届く)
- 家族が家計を管理している(家計表の作成の際にバレやすい)
- クレジットカードで生活費の支払いをしている(クレジットカードや家族カードが使えなくなるため不審がられる)
- ローンを組む(審査に落ちることで不審がられる)
- まだローンが残っている車がある(車を引き上げられてしまう) など
また、以下に該当する場合には、勤務先にバレてしまう可能性もあるでしょう。
- 勤務先からお金を借りている(裁判所から勤務先に通知が届く)
- 市区町村役場や金融機関など、官報を日常的にチェックする業種に勤めている
- 退職金がある(退職金見込額証明書を取得する際に不審がられる)
「住宅ローン特則」を利用する場合、住宅ローン自体は個人再生の減額の対象にはならないため、住宅ローンの返済をしつつ、他の借金の返済もしなければなりませんが、住宅は守れます。
ただ、住宅ローンを滞納している場合、住宅を残せる場合もありますが、早めに弁護士等専門家に相談することをおすすめします。
一方、自動車ローンがまだ残っている状態で、かつ所有者が信販会社やディーラーなどの債権者になっている場合(所有権留保)、車を引き上げられてしまいます。
この場合、ローンの支払いが大幅に削減される以上、所有者である債権者に、引き上げた車を売却して残ローンの返済に充てる機会を与えるべきだからです。
ローンがまだ残っている状態の車をどうしても手放したくないのであれば、次の方法を検討する必要があります。
- ローンを完済するもしくは家族や親族にローンを肩代わりしてもらう
- 住宅ローン特則を使うことができる(住宅を処分せずに済む)
- ローン債権者との間で別除権協定を結ぶ(車の評価額に相当する金額を支払うことで引き上げをしない約束を取り交わす)
- 裁判所に担保権消滅許可申請をおこなう(車の評価額に相当する金額を裁判所に支払うことで、裁判所に担保権を消滅させてもらう)
なお、自動車ローンの返済中であっても、車の名義が債務者になっている場合なら、返済を続ける限り車を手元に残しておくことも可能です。
一方で、個人再生をして借金を減額してもらう場合、保証人に借金の返済請求がいくことになります。この請求は、残っている借金の全額であり、再生債務者のように返済額が減額されるわけではありません。
「債務者自身が支払った金額」と「保証人が支払った金額」が借金総額に達した時点で保証人の支払い義務もなくなりますが、連帯保証人である以上、債権者から請求されたら支払いを拒むことはできません。
なお、機関保証で奨学金を借りていた場合、家族に請求がいくことはありません。
また、浪費行為や射幸行為(株・FX・投資など)で作った借金の場合でも同様です。
借金の理由が原因で自己破産できない場合には、個人再生を検討してみるのが良いでしょう。
ここでは、東京地方裁判所で必要になる書類をご紹介します。
参照:個人再生手続参考書式 書式5-2 必要書類一覧表|日本弁護士連合会
提出漏れがあると手続きをスムーズに進められないため、書類収集に漏れがないように対応する必要があります。
どうしても取得できない書類がある場合には、裁判所に上申書等を提出することで対応できる場合もあるので、個人再生をする場合、できれば弁護士に対応を依頼した方が良いといえるでしょう。
また、過去のデータ上個人再生の申立てでは、弁護士に依頼する方が2020年の調査では、80%の人が弁護士に依頼しているというデータがあります。
上記より、個人再生では弁護士に依頼することをおすすめしています。
個人再生に強い弁護士•司法書士おすすめ最新ランキング6選!。