自分のふるさとや思い入れのある自治体に寄付できる「ふるさと納税」、返礼品がもらえたり、税金が控除されたりするなど、非常にメリットの多い制度になっています。
寄付する自治体によっては返礼品が非常に豪華で、しばしばメディアで話題になることもあるので、気になっている方も多いのではないでしょうか。
少しでもお得に納税したいのであれば、ふるさと納税は非常にメリットの大きい制度ですが、その一方で、制度のことをしっかり理解しておかないと、ふるさと納税のメリットを最大限に活かせない可能性があります。
この記事ではふるさと納税の仕組みや限度額の計算方法、手続きの方法、確定申告のやり方、ワンストップ、メリット・デメリットなどをわかりやすく解説していきます。
ふるさと納税を利用しない方がいい人や、利用する際の注意点についても解説していきますので、ふるさと納税が少しでも気になる方は、ぜひ最後までご覧ください。
ふるさと納税の仕組みとは?住民税はどうなるの?
ふるさと納税とは、生まれ故郷や思い入れのある地域など、自分の好きな自治体に寄付できる制度です。
田舎で生まれ育った方は、大人になり都会に出て働くケースが多く、その場合、自分が今暮らしている都市部に納税することになります。そこで、自分を支え、育ててくれた生まれ故郷に対し、税制を通して恩返ししたいという想いが溢れたことから、ふるさと納税は導入されました。
ふるさと納税は、本来であれば、自分が暮らしている自治体に納めるはずの税金を、自分の好きな自治体に寄付できる制度です。そのため、寄付した金額については、所得税や住民税の控除を受けることができます。
とはいえ、控除を無制限に認めてしまうと、税収の減少から財政が破綻してしまう自治体が出てくることから、控除額については、収入や家族構成によってそれぞれ上限が定められています。
また、ふるさと納税の税制上、自己負担金として2,000円が課されることを頭に入れておく必要があります。
たとえば、年収400万円の独身の方が、4万円分のふるさと納税をした場合、控除される税額は、4万円−2,000円=3万8,000円となります。つまり、翌年に支払うはずの住民税や所得税が、合計で3万8,000円分減額されることになるのです。
なお、住民税は減額、所得税は控除された金額が還付される形で、申請者に還元されます。
ふるさと納税の利用者は年々増加していて、令和4年度にふるさと納税を利用した人数は、全国で約891万人に達しています。
参照:ふるさと納税に係る住民税控除額及び控除適用者数の推移(全国計)|総務省
ふるさと納税のメリット
ふるさと納税にはさまざまなメリットがありますが、主なメリットは次の通りです。
- ふるさとやゆかりのある地域を応援できる
- さまざまな返礼品がもらえる
- 所得税・住民税が控除されるため2重払いにはならない
- 使い道を指定して寄付できる
- クレジットカードやネットショッピングのポイントが貯まる
ここからは、それぞれのメリットについてくわしく解説していきます。
ふるさとやゆかりのある地域を応援できる
ふるさと納税は、全国で約1,600ある自治体の中から選んで寄付できるので、自分の生まれ育った地域やゆかりの地域、思い入れのある地域を、寄付を通して応援することができます。
寄付された金額は、各自治体の税収になるため、過疎化による人口の減少で税収確保が難しい自治体を支えることができるでしょう。これは、都市部との税収格差を埋めることにも繋がります。
また、返礼品の受注が増えれば地元産業が活性化しますし、ふるさと納税によって地域・自治体をPRすることで、旅行者の増加やインターネットショッピングの受注による地域産業の活性化も見込めます。
さらに、災害などで甚大な被害を被った地域に寄付することで、税制を通して復興支援ができるのも、ふるさと納税の大きな魅力の1つといえるでしょう。
さまざまな返礼品がもらえる
寄付金額によってさまざまな返礼品をもらえるのも、ふるさと納税の大きなメリットの1つといえます。
返礼品は各自治体によって異なりますが、その地域の特産品や名産品である場合がほとんどです。
返礼品の限度額は、寄付金額の30%までと規定されています。たとえば、ふるさと納税で5万円寄付した場合、最大で1万5,000円相当分の返礼品をもらえることになります。
ここで、実際にどんな返礼品があるのか、確認してみましょう。
- お米、牛肉•ハンバーグ•鶏肉•豚肉などの食材・食品
- ホタテやカニ、ウニ、うなぎ、サーモンなどの魚介類
- リンゴ、苺、みかんなどのフルーツ
- ジュース、お茶などの飲料
- ビール、日本酒(地酒)、ウイスキーなどのお酒
- 各地域の工芸品・装飾品
- 花、観葉植物
- 温泉、ホテル、飲食店の利用券
- 工場等の見学や工芸品体験ツアー
- 地元企業の工業製品(家電製品など)
- 洗剤やトイレットペーパーなどの消耗品・日用品
- オリジナルのLINEスタンプ作成
- FM局で自分の番組を放送できる権利
- 無人島宿泊チケット など
なお、自治体によっては、返礼品が記念品や感謝状だけのケースもあります。
ふるさと納税を考えている場合には、あらかじめどんな返礼品があるのか、しっかり確認してから寄付することをおすすめします。
所得税・住民税が控除されるため2重払いにはならない
ふるさと納税は、寄付した金額のうち2,000円を超える部分について、翌年の住民税が減額されたり、払いすぎた所得税が戻ってきます。
つまり、控除限度額の範囲内であれば、税金を2重払いすることにはならないことになります。
なお、控除限度額は、収入や家族構成によって異なるため、あらかじめしっかり確認しておくことが重要です。
使い道を指定して寄付できる
自分が寄付したお金の使い道を指定できるのも、ふるさと納税ならではのメリットだといえるでしょう。
今住んでいる自治体に納めている税金は、具体的にどういう目的で使われているかがわかりにくくなっていますが、ふるさと納税であれば、具体的に使用用途を指定して寄付できます。
各自治体のホームページや、提携している公式サイトで使用用途を明確にしている自治体もあれば、申請書の中で使用用途を選択できるようになっているケースもあります。
寄付金の使い道は、各自治体によってさまざまですが、よくある使い道としては、次のようなものが挙げられます。
- 災害・天災に対する「復興支援」
- 公園の整備や緑化の推進など「自然保護活動に関する事業」
- 防災拠点や備蓄資機材の整備、災害情報手段の充実など「暮らしの安全に関する事業」
- 農村・農業の活性化など「農業振興に関する事業」
- 観光事業や地域のイベントの促進、新たな商業拠点の創出など「地域の活性化に関する事業」
- 保育施設の充実などの「子育てに関する事業」
- 在宅医療・介護連携の推進など「健康・福祉に関する事業」
- 芸術文化活動の推進や学校給食を通じた食育の充実など「芸術・文化・教育に関する事業」
ここに挙げた以外にも、地域の起業家を応援する制度を用意していたり、犬猫の殺処分をゼロにするための活動費用など、各自治体によってさまざまな使い道があります。
自分が寄付したいと思うところがないか、各自治体のホームページなどでチェックしてみましょう。
クレジットカードやネットショッピングのポイントが貯まる
ふるさと納税の申請方法はいくつかありますが、ポイントが貯まるインターネットショッピングを利用して寄付をすれば、通常のインターネットショッピングと同じように、金額に応じてポイントを貯めることができます。
ふるさと納税に対応している主なポイントサイトは、次の通りです。
- 楽天ふるさと納税
- au PAY ふるさと納税
- JRE MALLふるさと納税
- マイナビふるさと納税
- 三越伊勢丹ふるさと納税
- ANAのふるさと納税
- ふるぽ(JTB)
- ふるラボ
- さとふる
- ふるなび
- ふるさとプレミアム
- ふるさとチョイス
- ふるさと本舗 など
たとえば、楽天ふるさと納税では、寄付することで楽天ポイントが貯まる仕組みになっています。日常生活で楽天を利用している方であれば、楽天経由で寄付するのを検討するのが良いでしょう。
さらに、寄付をクレジットカードでおこなうことで、ポイントサイトのポイントとは別にクレジットカードのポイントも貯められます。ポイントサイトとクレジットカードを使ってふるさと納税をすれば、お得に寄付できる仕組みになっているのです。
ただし、他人名義のクレジットカードを使って寄付をした場合、税金の控除を受けられない可能性があることに、注意が必要です。
ふるさと納税の限度額、「控除上限額」とは?控除額の計算方法
ふるさと納税を利用すると、寄付した金額から2,000円を超えた部分が、所得税および住民税から控除されますが、控除額には限度額(上限)が定められています。
税金の控除を受けるためには、原則、確定申告をおこなう必要がありますが、「ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告なしで税金の控除を受けることができます。
まずは、ワンストップ特例制度を利用しなかった場合における、所得税および住民税から控除される金額の計算式方法を確認してみましょう。
【所得税からの控除 ①】
①(ふるさと納税額−2,000円)×「所得税の税率」
・控除の対象となるふるさと納税額の上限金額は、総所得金額等の40%が上限です。
・令和19年中の寄附までは、所得税の税率は復興特別所得税の税率を加えた率となります。
・所得税の税率については、こちらのページをご参照ください。
【住民税からの控除 ②+③(③’)】
住民税からの控除は、大きく「基本分」と「特例分」の2つに分けることができ、それぞれ以下のように計算されます。
住民税からの控除(基本分)
②(ふるさと納税額−2,000円)×10%
・控除の対象となるふるさと納税額の上限金額は、総所得金額等の30%が上限です。
住民税からの控除(特例分)
ー特例分の控除額が住民税所得割額の2割を超えない場合ー
③(ふるさと納税額−2,000円)×(100%−10%(基本分)−所得税の税率)
・所得税の税率は、個人住民税の課税所得金額から人的控除差調整額を差し引いた金額により求めた所得税の税率であり、【所得税からの控除】における所得税の税率と異なる場合があります。
ー特例分の控除額が住民税所得割額の2割を超える場合ー
③’(住民税所得割額)×20%
また、ワンストップ特例制度を利用した場合、所得税からの控除はおこなわれず、所得税控除分も含めた控除額全額が、翌年度の住民税減額という形で申請者に還元されます。
ワンストップ特例制度を利用した場合における、住民税から控除される金額の計算式方法を確認してみましょう。
【住民税からの控除(基本分)】
ワンストップ特例制度を利用しない場合の計算方法と同様です。
【住民税からの控除(特例分)】
ワンストップ特例制度を利用しない場合の計算方法と同様です。
【住民税からの控除(申告特例分)】
特例分の控除額 × 所得税率 ×1.021 /(90%−所得税率×1.021)
具体的な計算方法を知りたい方は、各自治体の窓口に相談してみましょう。
ふるさと納税のやり方・手順
ふるさと納税のやり方や手順は、次の通りです。
ふるさと納税を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
シミュレーションを利用して控除上限額を確認する
控除上限額は、ふるさと納税をする本人の収入や家族構成、その他の控除額に応じて異なります。
控除上限額については、各自治体に問い合わせてみたり、総務省が公表している「目安表」や「寄附金控除額の計算シミュレーション」等を利用して確認するのが良いでしょう。
参照:全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安|総務省
控除上限額を超えて寄付した分は自己負担になってしまい、税額控除のメリットを受けることができません。あらかじめしっかり上限金額を確認しておくようにしましょう。
寄付したい自治体や返礼品を選び、寄付する金額を決める
各自治体のホームページや、ふるさと納税の情報をまとめたポータルサイトなどを利用して、寄付したい自治体や返礼品を選びましょう。
また、ふるさと納税をおこなっている多くの自治体では、寄付したお金の使い道を選択できるようになっています。寄付する自治体を選ぶ際は、自分が応援したい分野や事業があるかどうかも確認してみると良いでしょう。
なお、ふるさと納税は複数の自治体におこなうことができますが、寄付する自治体が5つを超えた場合には、ワンストップ特例制度を利用できなくなるので、注意が必要です。
寄付の申し込みをする
寄付する自治体や返礼品、寄付金額が決まったら、各自治体のホームページや、ふるさと納税についてとりまとめたポータルサイトから、ふるさと納税の申し込みをおこないます。
各自治体の窓口での申し込みも可能ですが、オンライン申請の方がスムーズに手続きをおこなうことができるでしょう。
支払い方法は各自治体によって異なりますが、ポータルサイトであれば、クレジットカードでの支払いも可能です。
なお、ワンストップ特例制度を利用して住民税の控除をおこなう場合には、寄付をした翌年の1月10日までに、ワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)の提出が必要です。
申請書の書式や提出方法については、各自治体によって異なる場合があるので、くわしくはふるさと納税をする自治体に問合せてみましょう。
また、ふるさと納税で寄付した全額を、自治体でおこなう事業運営に使って欲しいという想いがあれば、返礼品を辞退することも可能です。その場合には、ふるさと納税を申請する際に、その旨を一言添えておくと、スムーズに手続きが進むでしょう。
返礼品や寄付受領証明書が届く
申請が受理されると、申請先の自治体から返礼品や寄付受領証明書が届きます。
数週間で届くケースが多いですが、具体的なタイミングは自治体によって異なります。
場合によっては数ヵ月かかる場合もあるので、もしなかなか返礼品が届かない場合には、申請先の自治体に、申し込み状況を確認してみると良いでしょう。
なお、寄付金受領証明書は、寄付したことを証明する公的な書類であり、確定申告の際に必要になる大事な書類です。失くさないよう大切に保管しておきましょう。
寄付金控除の手続きをおこなう|確定申告・ワンストップ特例制度
ふるさと納税で寄付した金額について税額を控除してもらうために、「確定申告」もしくは「ワンストップ特例制度」を利用して、寄付金控除の手続きをおこないます。
確定申告期間は、ふるさと納税をおこなった翌年の2月16日から3月15日までです。
寄付金受領証明書を確定申告書に添付する必要がありますが、これを忘れると税額の控除が受けられなくなってしまうので、忘れずに手続きをおこなうようにしましょう。
なお、ワンストップ特例制度を利用する場合は、基本的にはふるさと納税を申請した時点で手続きが完了するため、別途、確定申告をおこなう必要はありません。ここで確定申告をしてしまうと、ワンストップ特例制度を利用できなくなるため、注意が必要です。
ふるさと納税のデメリット
ふるさと納税は、寄付するだけで返礼品をもらえたり、所得税・住民税の控除が受けられる魅力的な制度ですが、頭に入れておきたいデメリットも存在します。
- 2重払いにならないだけで減税・節税効果はない
- 控除申請に手間がかかる
- 自己負担金として2,000円かかる
ふるさと納税を有効活用するためにも、これから説明するデメリットについてはしっかり理解しておくようにしましょう。
2重払いにならないだけで減税・節税効果はない
ふるさと納税は、税金の2重払いにならないだけで、減税や節税効果はないことをしっかり頭に入れておきましょう。
ふるさと納税は、寄付した金額が、住民税や所得税から控除される仕組みです。つまり、本来支払うはずの税金を前払いしていることになるため、支払う税額そのものを減らす減税や節税対策とは、根本的に違うものだといえるのです。
ただし、普通に納税しているだけではもらえない返礼品をもらえることを考えると、寄付者に金銭的なメリットが大きい制度だといえるでしょう。
控除申請に手間がかかる
税金の控除申請に手間がかかることも、ふるさと納税のデメリットの1つとして挙げられます。
前述したように、ふるさと納税で税金の控除をしてもらうためには、「確定申告」もしくは「ワンストップ特例制度」を利用して、寄付金控除の手続きをおこなう必要があります。
会社勤めでこれまで年末調整しかしたことがない方にとって、自分1人で確定申告をしなければならないのは、非常にハードルが高いと思います。
この点、ワンストップ特例制度を利用する場合、確定申告をする必要がなくなりますが、ワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)の提出が必要になります。
確定申告よりも手間は少なくて済みますが、それでも多少の手間はかかることを頭に入れておく必要があるでしょう。
自己負担金として2,000円かかる
ふるさと納税で寄付した金額は、所得税や住民税から控除されますが、自己負担額として2,000円はかかることを頭に入れておく必要があります。
寄付した金額がそのまま全額控除されるわけではなく、控除限度額内において、寄附した金額から2,000円を引いた金額までしか控除されません。つまり、同じ納税額を支払いながら、実質2,000円で返礼品を購入していることと変わりないことになるのです。
返礼品の中には、2,000円以上する高価なものも含まれているため、金銭的なメリットは大きいかもしれませんが、ふるさと納税の仕組み上、自己負担額があることもしっかり頭に入れておきましょう。
ふるさと納税の注意点
ふるさと納税を利用する際の注意点は、次の通りです。
- ふるさと納税をしてもすぐに現金が戻ってくるわけではない
- 自分が住んでいる自治体からは返礼品を受け取れない
- ワンストップ特例制度が使えないケースがある
- 控除限度額を超えるふるさと納税は自己負担になる
- 寄附した人と控除申請をした人の名義に注意
- iDeCoなどほかの控除によっては限度額が下がる
適切に手続きを進めないと、税金の控除が受けられなかったり、余計なお金を支払うことにもなりかねません。
ふるさと納税の恩恵をしっかり受けるためにも、これから説明する注意点をしっかり頭に入れながら手続きを進めましょう。
ふるさと納税をしてもすぐに現金が戻ってくるわけではない
ふるさと納税をしても、寄付した金額がすぐに手元に戻ってくるわけではありません。税金の前払いをしているのと変わらないことになるため、経済的に余裕がないときに寄付するのは、経済的に苦しくなるリスクがあります。
ふるさと納税の仕組み上、寄付した金額が控除されるのは、翌年の住民税や所得税からとなります。そのため、寄付した翌年2〜3月におこなう確定申告で控除申請をおこない、住民税の減額や所得税の還付を受けて初めて、金銭的なメリットを受けられることになるのです。
たとえば、2024年にふるさと納税を利用した場合、所得税の還付は2025年の4〜5月ごろ、控除される住民税額が決定するのは、2025年6月ごろとなります。
自分が住んでいる自治体からは返礼品を受け取れない
一部の自治体を除き、自分が住んでいる自治体にふるさと納税をおこなうこともできますが、その場合、返礼品を受け取れないことに注意が必要です。
この場合、通常の納税と変わらないことになり、自治体としては余計な手間が増えることから、返礼品を贈る必要はないと考えるからです。
たとえ、返礼品が魅力的だったとしても、自分が住んでいる自治体では、ふるさと納税のメリットを十分に受けられないことを、しっかり頭に入れておきましょう。
ただし、ふるさと納税を利用して納税することにり、寄付金の使い道を指定できます。この意味で、自分の住んでいる自治体にふるさと納税をすることにも、一定のメリットはあるといえます。
ワンストップ特例制度が使えないケースがある
もともと確定申告が必要な人の場合、ワンストップ特例制度を利用して税金の控除をおこなうことができません。
そもそもワンストップ特例制度とは、ふるさと納税を利用した人が、確定申告をしなくても税金の控除が受けられる制度です。
ワンストップ特例申請書(寄附金税額控除に係る申告特例申請書)に必要事項を記入して、寄付した自治体に送るだけなので、確定申告よりも手間をかけずに税金の控除を受けることができます。
ここで、ワンストップ特例制度の利用条件について確認してみましょう。
1.もともと確定申告や住民税申告をする必要のない給与所得者等であること
2.ふるさと納税以外に確定申告または住民税の申告を行う必要がない人
3.年間に寄付する自治体の数が5ヵ所以内の人
一般企業に勤める会社員であれば問題ありませんが、フリーランスや自営業の場合には、確定申告を必ずおこなう必要があることから、ワンストップ特例制度を利用できません。
また、医療費控除や初めて住宅ローン控除を受ける場合には、別途確定申告が必要となるため、この場合にも、ワンストップ特例制度を利用できません。
ワンストップ特例制度を利用できない場合には、確定申告の際に税金の控除も併せて申告することになります。
なお、年間6回以上ふるさと納税で寄付したとしても、寄付する自治体が5ヵ所以内であれば、ワンストップ特例制度を利用することができます。
また、確定申告で控除申請をするはずだったにもかかわらず、翌年の確定申告で申告し忘れてしまった場合には、5年以内であれば、更正の請求で税金の控除を受けることができます。
控除限度額を超えるふるさと納税は自己負担になる
ふるさと納税で寄付した金額が控除限度額を超えた場合、その超えた部分については自己負担になるため、注意が必要です。
控除上限額は、ふるさと納税をする本人の収入や家族構成、その他の控除額に応じて異なるので、あらかじめ総務省のホームページや各自治体のホームページで確認しておくようにしましょう。
ただし、控除上限額を超えた部分については、その一部を寄附金控除の対象とすることで、税額控除のメリットを受けることができます。
寄附金控除は、公益社団法人や公益財団法人などへの寄附に対する控除のことで、一定の金額を上限として住民税・所得税の控除が認められています。
もし、ふるさと納税で限度額を超えてしまった場合には、確定申告をして、寄附金控除として自己負担分を減らすと良いでしょう。
寄附した人と控除申請をした人の名義に注意
クレジットカードでふるさと納税をおこなった場合、クレジットカードの名義人と控除申請者の名義人が異なると、控除を受けることができない可能性があります。
夫婦でお互いクレジットカードを持っているものの、生活費全般の支払いはどちらか一方のクレジットカードで支払いをまとめているケースも多いです。
たとえば、夫名義で寄附したつもりでも、決済で利用したクレジットカードが妻名義だった場合には、基本的に税金の控除がされません。
家族名義でも控除は認められないので、支払いをするときは、寄附する人と同じ名義のクレジットカードを使うことを心がけましょう。
iDeCoなどほかの控除によっては限度額が下がる
iDeCoなど、所得控除や税額控除をほかの部分ですでに受けている場合、その分ふるさと納税で受けられる税額の控除額も下がってしまいます。その結果、ふるさと納税による税額控除のメリットを、十分に受けれない可能性があるでしょう。
もし、iDeCoとふるさと納税を併用したいのであれば、iDeCoによって下がった所得額をもとに、ふるさと納税の控除上限額を、あらかじめ正確に計算しておく必要があります。
ふるさと納税とさまざまな税制上の優遇制度のどちらを優先するかは、収入や扶養家族の人数などによって異なります。
自分にとってベストな方法がわからない場合には、ふるさと納税を利用する前に、各自治体の窓口に相談するのが良いでしょう。
ふるさと納税をしない方がいい人は?
ふるさと納税は、返礼品や税金の控除など、さまざまなメリットのある魅力的な手続きですが、状況によってはあまりメリットを受けれない人もいます。
たとえば、次の3つのいずれかに該当する場合には、ふるさと納税を利用するメリットがあまりないといえます。
- 専業主婦やパートなど所得税や住民税を払っていない方
- 所得が低く金銭的なメリットが小さい場合
- 定年退職して収入が公的年金しかない方
ふるさと納税をお得に利用するためにも、自分が次の3つのパターンに当てはまらないか、しっかり確認しておくようにしましょう。
専業主婦やパートなど所得税や住民税を払っていない方
専業主婦やパートなど、そもそも所得税や住民税を払っていないのであれば、ふるさと納税による税制上のメリットを受けることができません。
ふるさと納税は、特定の自治体に寄付することで、所得税や住民税の控除を受けられる制度です。
この点、専業主婦やパート勤務で収入が低く、そもそも所得税や住民税を払っていない場合には、ふるさと納税による控除のメリットはありません。つまり、寄付した金額で返礼品を購入しているのと同じ状況になってしまうのです。
また、たとえ、所得税を納めていたとしても、住民税が非課税になっている場合には、ふるさと納税による住民税の税額控除を受けることができません。
制度の仕組みをしっかり理解しておかないと、金銭的に損をしてしまうことにもなりかねませんので、あらかじめどれくらい税金が控除されるのかを、しっかり確認しておくようにしましょう。
所得が低く金銭的なメリットが小さい場合
所得税や住民税を払ってはいるものの、所得が低く納税額が低い場合には、ふるさと納税によるメリットを最大限に受けることができません。
たとえば、夫婦共働きで給与収入300万円、大学生と高校生の子どもがいる世帯の場合、控除限度額は7,000円です。返礼品の限度額は、寄付金額の30%までと規定されていることから、このケースでもらえる返礼品の最高額は2,100円となります。ふるさと納税の自己負担額は2,000円となるので、このケースの場合、実質100円しかお得にならないことになるのです。
ただ純粋に、特定の自治体を応援したい場合は別ですが、少しでもお得に寄付をしたいと考えるのであれば、申請の手間をかける価値があるのかを、慎重に検討する必要があるでしょう。
定年退職して収入が公的年金しかない方
ふるさと納税をした年に定年退職し、収入が公的年金しかない方の場合、税金控除のメリットを十分に受けれない可能性があります。
退職金は、支給される退職金から天引きという形で課税金額が徴収されます(現年分離課税)。控除を受ける前に徴収されてしまう課税制度であることから、退職所得は、ふるさと納税の控除対象外となってしまうのです。
また、住民税は前年の所得額を基に決定されるため、たとえば、2024年の1月に退職して再就職をしなかった場合には、その分その年の収入も低くなることから、2025年に支払う住民税も低くなります。この場合、ふるさと納税による税金控除のメリットを最大限に受けれなくなってしまうおそれがあるでしょう。
なお、退職金にかかる所得税については、控除の対象となります。
ふるさと納税に関するよくある質問【Q&A】
まとめ
ふるさと納税は、自分の生まれ故郷や思い入れのある自治体に寄付できる制度で、返礼品をもらえたり、所得税・住民税の控除を受けられたりするなど、さまざまなメリットがあります。
税金の控除を受けるためには、確定申告もしくはワンストップ特例制度を利用して控除の申請をおこなう必要があります。
控除限度額を超えるふるさと納税は自己負担になってしまうため、あらかじめ総務省のホームページや各自治体のホームページで、控除限度額をしっかり確認しておくことが重要です。
ふるさと納税に興味がある方は、この記事でも紹介している、ふるさと納税の注意点やふるさと納税をしない方がいい人に該当しないか確認し、自分がふるさと納税のメリットを最大限に受けれるかを検討してみることをおすすめします。